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インタビュー一覧
  • Vol.6 特殊塗装技師 前田 達也さん(37歳・志知地区)
  • Vol.5 農家 橘 真さん(46歳・倭文地区)
  • Vol.4 ママさんバレーボール監督 稲山 桂子さん(60歳・賀集地区)
  • Vol.3 木工家 岡田 敦さん(31歳・倭文地区)
  • Vol.2 瓦師 清水公博さん(36歳・津井地区)
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  • インタビューを開始します!(2009/11/27)
  • Vol.6 特殊塗装技師 前田 達也さん(37歳・志知地区)


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    前田達也さん(工房にて)

     第6回インタビューは、特殊塗装の一種である「エイジング」技術を駆使し、店舗デザインやインテリアを手掛ける前田達也(まえだ たつや)さんの登場です。
     前田さんは東京ディズニーシーやユニバーサル・スタジオ・ジャパン建設時に塗装技師として腕を磨かれ、4年前に屋号「風の絵」で独立。志知を拠点に日本全国でご活躍されています。淡路島内でも、洲本市栄町のイタリアンレストラン「tanmi dining Rabo」や南あわじ市福良のスイーツカフェ「G.エルム」などのインテリアを手掛けておられます。


    「エイジング」技術とは


    ■「エイジング」技術という言葉はあまり耳慣れませんね。
     「『エイジング』という言葉は、文字通り「年齢=エイジ(age)」から来ている。日本では耳慣れないと思うが、ヨーロッパではもう何世紀も前から存在する技法。ヨーロッパでは古い建築物が並ぶ街並みが魅力というのはご存知だと思うけれども、その街並みの間に新しい建物が出きるとものすごく目立ってしまう。そういう景観を害さないように、新しい建物をわざと古く見せる『エイジング』技法が確立されている。
     正確には、ヨーロッパでは『エイジング』ではなく『フォー(Faux:フランス語で“模倣”を意味する)』と呼ばれている。新しく建築した壁やインテリアを古めかして仕上げることを『フォー・フィニッシュ』と言う。『エイジング』は英語で、米国ではハリウッド映画などで古い時代を描く装飾をするときに『エイジング』と呼んでいるので、それが分かりやすく普及したのだと思う。」

    ■ヨーロッパではエイジング技師の地位が確立されている?
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    屋号 『風の絵』
     「エイジング技師は、ドイツではマイスター制度で国が認めた特殊技能を持つ職人として地位が確立されている。フォー・フィニッシュ(エイジング)ができる職人達を集めて、何世紀も前に建てられたドイツの全土にある建築物を修復する『風の画家(Luftlmaler)』という団体も組織されている。『風の画家』は、建築物の壁画を修復する団体だけれど、『フォー・フィニッシュ』は、もともと絵画の修復技術として生まれたと言われている。
     実は、僕の屋号である『風の絵』は、この『風の画家』にあやかって付けたもの。」

    紆余曲折から『エイジング』技術に出会い独立


    ■高校卒業後は?
     「高校卒業まで淡路にいて、その後、京都嵯峨芸術大学短期大学に入学。ビジュアルデザインというコースがあって、そこで絵の勉強をした。その後、イラストや美術に携わる仕事に就きたいと思い、東京にあるプロ養成所に入所。そこで頑張ればよかったけれど、根気がなくて養成所を中退。プロにはなれないと判断して、淡路に一旦帰ってきた。
     それでも、やっぱり美術に関わる仕事がしたいと思い、洲本にあるデザイン会社に就職。地域雑誌や広告を作っていた。でも、そこも4ヵ月で退職。ほんとに、この頃はなかなか落ち着きがなかった。」

    ■現代美術作家 尾崎泰弘氏との出会い
     「デザイン会社を退職したちょうどその頃、淡路在住の現代美術作家 尾崎泰弘さんから仕事を手伝って欲しいと連絡を頂いた。
     尾崎先生は、最近は木を使った作品が多いけれども、当時は土を使って焼き物や彫刻をやっていた。津名の生穂あたりに「土器屋(からきや)」という地名があって、昔から良質の土が取れるということで、この土を使って焼き物をしていた。
     尾崎先生は6メートルもある方舟を作ったり、とにかくユニーク。6メートルの方舟を作るのはかなり難しく技術が必要。方舟の部分ごとに焼いていくことになるけれども、焼くと大体1割くらいは縮んでしまうので、それを計算した上で元のパーツを作らないといけない。土を扱うのは、今、僕の仕事にしているエイジング技術と通ずるところもあり、とても勉強になった。尾崎先生は恩師。先生のところに、3年間お世話になった。」

    ■津名フェリーセンタービルでのアートイベント
     「尾崎先生のところにいる間に、『ポートベロプロジェクト』という名前でアートイベントを開催。これは僕にとっては大きな転機となった。
     『ポートベロ』という言葉は、フランス語で『波止場』とか『港』という意味で、この『ポートベロプロジェクト』では大阪を中心とした芸大出身のアーティストが、日本各地の港でアートイベントを開催していた。今はインターネットや情報化社会で世界に情報が発信されているけれども、一方で、港もネットワークとして世界とつながる入口になる。ポートベロプロジェクトは、そういう考え方から、地域活性化の拠点として港に芸術家や色々な業種の人間を呼んできてイベントをおこなっていた。その一環でプロジェクトメンバーが淡路島に関心を示し、津名フェリーセンタービルでイベントを開催することに。そこに、尾崎先生と僕が参加した。
     津名フェリーセンタービルは、当時は既に廃ビルになっており、中華料理屋など数店舗入っていたものの、全く活気がない状態だった。ただ、場所が国道沿いということもあり何とかならないかという話になった。当時の津名町長も美術にとても関心のある人だったので、イベントに協力してくださった。
     ただ、残念ながらこのイベントは1年で終了。アートが地域に根ざすような形で、特にイベントが地域に密着していなかったのが原因。イベント参加者はほとんど島外の人たちで、地元に還元できなかった。」

    ■壁画の仕事からエイジング塗装技師へ

    エイジング塗装の例1:
    錆びた鉄板(発砲スチロールで製作)



     「尾崎先生のところを辞めて、その後、特に深く考えずにまた京都に。京都では、絵画教室の先生をやりながら、壁画の仕事の募集があったので応募。当時建設中だったユニバーサル・スタジオ・ジャパンの壁画作業員としてかりだされ、そこでエイジング技術を学んだ。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの建設当時は、日本ではまだ『エイジング』技術は知られておらず、僕自身もアメリカ人やドイツ人なんかの外国人から技術を教えてもらった。その後、東京ディズニーシーのホテルの内装、外装にエイジング塗装を施す技術者として勤めたりした。
     でも当時は、エイジング塗装含めてこの手の技術はすべて大手ゼネコンを通した仕事になっており、もっと地域にエイジングという技術や業界があることを知ってもらいたいと思っていた。『町職人』の感覚で、例えば店舗の内装や住宅のちょっとしたところにエイジング技術を使えるようにしたいなと。それで一念発起して、淡路に戻って独立することに決めた。」

    仲間との出会い、エイジング塗装技師として仕事が本格化


    ■独立して仕事は順調に進んだ?
     「淡路に戻って独立して、最初は、全く仕事がなかった。まず『エイジングって何?』というところから始まり、それから僕は営業が下手なので全然だめ。周りからも、営業担当を見つけないと駄目だと言われた。それで戦略を変更して、1年間はネットワーク作りに専念することにした。」

    ■アパレルショップ『cavane』でのスタジオ開設
     「ネットワーク作りの第一歩として、前の仕事で知り合った大阪のアパレルショップ『cavane』に何度もアプローチをした。『cavane』は中世の服を意識したデザインが多く、店内もアンティークを基調としている。とにかく、僕のエイジング技術を見せることができるショーケースが必要だと思っていたので、『cavane』の内装を無償で実施させてもらった。それから、ショップの2階を借りて写真スタジオにさせてもらうことにした。エイジング塗装を施した写真スタジオは、雑誌向けの写真などを撮影するプロのカメラマンにも受けて、使ってもらえるようになった。
     こういうショーケースがあると、仕事はうまくまいこんでくるようになる。『cavane』と古木材などの輸入会社、アンティーク家具を扱う会社の3社で共同経営の会社『Three Legs』をつくり、互いの強みを活かした新しい動きもはじめた。『Three Legs』は3つの脚という意味。最近は、3社以外にも協力企業が増えて、内装や家具だけでなく建物の工事の段階から請け負って自分達のコンセプトに合った仕事ができるような体勢を整えつつある。」

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    エイジング塗装の例2:
    石壁(発砲スチロールで製作)
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    エイジング塗装の例3:
    美容師用ワゴン(使い古した雰囲気が出るように塗装)


















    他業種との共存、淡路への想い


    ■エイジング塗装技術は、本物のアンティークや素材業界と敵対するのでは?
     「確かに、本物のアンティークと比較するとエイジング塗装は割安で、敵対するように見えるかも知れない。でも、実際には、例えば店舗を全てアンティークでそろえたいけれども予算的に厳しいから少しエイジング技術で補完する、本物の土や木を使うと重量に耐え切れなくて構造的に難しい部分をエイジング技術で補うというように、他業種と共存するような依頼の方が多い。そういう意味では互いの強み・弱みをよく分かった上でうまく補完し合うことができていると思っている。」

    ■全国にショールームを作りはじめた?
     「『Three Legs』で、京都、神戸、芦屋、箕面などにショールームをつくりはじめている。ショールームと言っても、実体のある店舗に対して「僕達が改装をしてあげるから、僕達の宣伝もお願いします」という方法で無償で各地に作っていった。
     おかげさまで反響が大きく、ショールームをきっかけにして仕事を頂くことも出てきた。」

    ■淡路島へのこだわり・想い
     「僕の仕事は、ほとんど全てが島外なので、平日も90%以上が島外で仕事をしている。そのため、淡路島にいる理由があるのか、と多くの人から聞かれる。
     でも、僕には夢があって、この仕事をあと10年くらい続けて実績ができれば、淡路島に僕のスタジオを構えたいと思っている。スタジオはエイジング技術のショールームで、写真撮影に使えるようにしたい。
     インターネットが普及して、紙媒体からデジタルに移行しつつあって、ますます写真や画像が持つ情報力が重要になってくると思っている。淡路島にも瓦なんかの特産品や食品などのお土産がいっぱいあり、それをインターネットを通じて販売する機会が多くなると思うけれども、そうなると、いかに格好良い写真がとれるか、商品をいかに格好よく見せるかということがますます重要になる。そういうときに、販売したい商品を撮影するためのスタジオがあると良いのではないかと考えている。
     スタジオは3ヶ月に1回くらい内装を更新して、どんどんローテーションをしていく。今月はヨーロッパ調、次回はなんとか調みたいに。そういう空間を提供していきたいと考えている。
     僕達やその一・二世代下の人たちは、淡路島の人口が減り、魅力が少なくなっていく中で、親から引き継いだ会社や店を維持していかなければならず、どうやって情報発信していくか悩んでいる人は多い。そういう若い人たちと、淡路の魅力を発信していけるような、そういう場を作っていきたい。」

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    前田さん、お仕事で全国を飛び回るお忙しい合間にインタビューにご対応頂き、ありがとうございました!
    エイジング塗装、きっとみなさまの身の回りにもたくさん応用されているはずです。前田さんの第一線でのご活躍、楽しみにしています。

    (インタビュー日:2010年10月17日 文責:溝淵)


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