南あわじのおもろい”ひとびと”

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Vol.3 木工家 岡田 敦さん(31歳・倭文地区)

 第3回インタビューは、南あわじ市倭文地区在住の木工家 岡田敦(おかだ あつし)さんです。

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岡田敦さん(右)、妻・直子さん(左)
いろはくん(右上)
 岡田さんは、生まれも育ちも大阪。大阪芸術大学を卒業後、京都、宮崎などでの修行を経て、2007年に祖父母が住んでいる南あわじ市の倭文土井に「岡田家具創造堂」を独立開業。漆塗りで手作りの椅子やテーブル、食器棚などの木工家具を製作・販売されています。同じく、生まれも育ちも大阪の妻・直子さんは広報を担当。工房と打合せスペースを兼ねたギャラリーは、岡田さんの祖父母の自宅を間借りしているとのことです。
 若い世代が島外に流出するなかで、「Iターン」を選択された岡田夫妻に、淡路島の良さも含めてお話を伺いました。

*岡田家具創造堂のホームページ: http://souzoudo.com/

紆余曲折を経て淡路島にたどり着く


 ■淡路島にたどり着くまでには、色々なところで修行していたそうですが?
 敦さん:「元々は設計士になりたくて、建築を学べる大学をさがしていたら運良く大阪芸術大学に入学することが出来ました。残念ながら絵はあまり上手く描けませんが…(笑)
 大学生活の中でダンボールの椅子を作るという授業があり、改めて「物を作る」ということに興味が湧き、そこから家具職人としての道を模索し始めました。
 最初に働かせてもらった所が、大阪の家具修復を行うお店で、人材募集の紙が貼ってあるのを見て、飛び込みで面接を受けに行きました。働かせてもらう中で家具の修復だけでなく、接客をさせて頂く機会も得ることが出来ました。その時は職人としての道だけを目指していたので自分の中で折り合いがつかず、挫折して辞める決断をしました。でも今思うと、お客様の喜んでいる姿を見れたあの経験は、貴重な財産となっている気がします。
 その後、京都で家具製作の基礎を学びました。そして宮崎県にある指物工房矢澤に就職。師匠の所ではネジや釘を極力使わず、「ほぞ」や「組手」を使って木を組み立てる技法を採用しており、当工房でもそうしています。師匠の所で修行する方の多くが3年くらいで独立していましたので、自分自身も3年間みっちり木工漬けの毎日を送りました。
そして師匠は経営理念もしっかりしており、大変勉強になりました。「木工家として生きていく」という事を教えてもらえた気がします。
 3年目の修行中には、阪神間で開業出来る場所を探していたのですが、なかなか見つからずにいたところ祖父母が倉庫を使っても良いと言ってくれ、淡路島で工房を構える事を決めました。」

 ■淡路島に移住することに抵抗はなかった?
 敦さん:「私は、小さい頃から両親に連れられて年に数回は倭文土井に来ていましたので、全く抵抗はなかったですね。」

 直子さん:「私も、宮崎に比べると、大阪にも近いしルンルンでした(笑)。
 大学時代の夫に出会い、付き合って7年目で結婚。夫が宮崎に就職してから1年半後に、私も宮崎に引越しました。それまでは、大阪で歯科衛生士をしていました。付き合っているときから、夫がいずれ独立して別の場所に住むかもしれないということは覚悟していましたので、仕事を辞めてついて行くこともできました。それに、歯科衛生士であれば、どんな場所でも仕事ができる自信もありましたし。その時は…。
 でも、宮崎ではさすがにホームシックになりましたね。想像以上の田舎で、引越して最初はすることもなく、家も6畳一間で掃除をするにもすぐ終わってしまう。買い物にも行けず、ブルーな1日を過ごした事もありました。そんな1日を今は笑って話せるのも、いい経験が出来た証拠なのかもしれません。
 宮崎のときと比較すると、淡路島の方が買い物に行くにも車が必要で不便なのかも知れないのですが、祖父母がいたり、夫の母方の実家なので両親が来てくれたり、自分の実家にも帰ろうと思えばすぐに帰れると思うと、特に不自由は感じていません。
 淡路島で暮らして3年ほど経ちますが、いまだに不満は特にないですね。仕事と子育てにいっぱいいっぱいで、余裕がないだけかも知れませんが(笑)。」

 ■独立してからの生活は?
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神戸で開催した個展『木の香展』の看板。
今は倭文の工房でお客様を出迎えます。
 敦さん:「最初の1年は、仕事も無かったので本当に「大丈夫かな?」という気持ちの中で生活していました。でも様々なめぐり合わせで独立して1年後に「薫陶の郷」での個展が決まり、それに向けての製作をしながらの密度の濃い開業元年となった気がします。
 個展をさせて頂いてからはお客様にも恵まれて、年1回の個展を開きながら様々なイベントや展示会に参加しています。
 人の繋がりや、自分自身の生活環境も少しずつ変化してきています。前に進めているかどうかは分かりませんが、なかなか充実した日々を送れていますね。」




商品の考案から販売 “ひとりではつくらない”


 ■商品の考案から販売までの流れは?
 敦さん:「大まか流れは、『商品を考案→図面をおこす→材木を調達→製作』というもの。
 考案作業は、他の作業と並行して行っているのですが、行き詰った時には裏山を散歩しながら、気分転換もかねて頭を捻っています。
 自然界には「黄金比(1:1.618の最も美しいとされる比率)」が多くあると本で読んだので、散歩をしているのですが…そう簡単ではないです。(笑)
 また、お客様のご意見を取り入れてデザインを考える場合もあります。その後、お客様のご要望に合わせた木材や、個展等での製作の時は自分で思う木材を調達し製作に入ります。
 製作の方は作る物によって期間は違いますが、椅子だと木工作業に2~3日、漆塗りの最終工程まで入れると、考案から3週間くらいでしょうか。」

 ■良し悪しはどうやって判断する?
 敦さん:「家具の最終判断は妻にお願いしています。日用品として当工房の家具は使って頂きたいので、女性である妻の意見は的確に良いところを突いている気がします。
ダメ出しをされることもありますが、話し合いながら1つずつ消化して進めていきます。でも折り合いがつかない時は、作品にならないこともあります。」

 直子さん:「私は専門家ではないので、「強度」とか「技術的にできる・できない」とかは分からないんですけど、「ここは、こうあって欲しいな」という考えで意見を言っています。その上で、できるかできないかは、夫に考えてもらう。」

 敦さん:「そうすると、後は私の仕事なので。とりあえず完成を目指してひたすら製作です。
 そして出来上がったものについて話し合います。
 椅子であれば座ってみないと良し悪しを判断しにくいので、最終的に出来上がったものに対しても駄目になる場合もあります。だから、試作品が我が家の家具になっていっています。使わないと分からないと自分に言い訳しながら…。
 今作っている家具の形も少しずつ変わっていくだろうなと思っています。悪いところがあるから変わる場合もありますが、そのほかにも日本人の体格が変わってきているので、数年後には椅子の座面の高さが変わったり、大きさが変わったりすることもあると思うので、そういう色々な視点を取り入れたいと考えています。
 妻やお客様、生活環境の変化など様々な事柄を考えて製作しているので、『1人でつくらない』こと。これが重要だと思っています。」

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岡田夫妻お気に入りの作品。
縦格子にこだわりがあります。
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直子さんからダメ出しのあった作品。
今は岡田さんの祖母が愛用されています。


















“まずは目の前のお客様を大切にしたい”


 ■“アーティスト”と“木工家”の違い
 敦さん:「大学時代はどちらかというとデザイン寄りで作品を作っていました。また、「こういう環境で家を建てるとするとどういう家にするか」といったコンセプトに重点を置いている授業が多かったです。“自己表現”の場として建築を扱っており、アーティストに近かったかも知れません。
 でも、私は今は日用品としての家具を作っていますので、アーティストとは少し違う。人と交わって製作をしたい。そういう意味では、基本的にお客様と交わらない職人とも違う。『木工をする家』という意味で「木工家」と呼ばれるようになりたいですね。ただ、私自身はまだそこまで呼んで頂けるほどには至ってないですが(笑)。」

 ■“木工家”として市場開拓していく方法は?
 敦さん:「営業活動としては、雑誌社に投稿したり、新聞に取り上げて頂いたり、Kiss FMにも2回ほど出演させて頂きました。あとは、個展の回数を増やすことも必要だと思っています。木工関係では、年に5回ほど公募展の機会もありますので、そういうところで実績を積む必要もあると思っています。
 2009年の神戸の個展でも、既に朝日現代クラフト展で入選していたので、お客様には、「じゃあ、少し見てみようか」とか「椅子に座ってみようか」というきっかけになっていたと感じました。
 それから私達の作品は手作りで、一般的な家具に比べると高額になります。ですので実物を見ずに購入することは難しいと思っています。実際に見て、手に触れられる場を多くしたいと考え、また、お客様が必ずインターネットを使っている方ばかりではないので、雑誌などの紙媒体を通じてアピールすることも必要だと思っています。」

 ■目指す木工家とは?
 敦さん:「お客様に満足していただける家具作りをする事だと思っています。
まだまだ勉強不足なことも多くあるので、日々頭と体をフルに使いながら製作をし、少しずつ自分自身を磨いていけたらと思っています。
 また、お客様から教えて頂けることも多く、お客様の声を大切に『1人で作らない』木工家を目指していきます。」

淡路島について


 ■淡路島で「岡田家具創造堂」の家具を普及したい?
 敦さん:「淡路島で少しこだわりのある家具を買い求めるときに、神戸や大阪に出掛けているという話を聞いたことがあります。そういう方々に、淡路島でも家具を作っている人がいるということを知って頂き、選択肢の1つに当工房を入れてもらえるよう、私達が努力していかなければならないとは思っています。」

 ■淡路島の好きな場所は?
 敦さん:「土井谷は好きですよ。安住寺の「へび祭り」も良かったです。近所のお祭りなどにも、少しずつ参加させて頂いています。」

 直子さん:「土井谷は本当に素敵。お客様の中にも、高速道路を洲本インターで降りて広田まではどこにでもある風景だけれど、広田から信号を右折して山に入ると少し風景が変わる、そこから土井谷に抜けると一気に景色が変わり、本当に素敵な場所だと言ってくださる方もいるんですよ。」


工房を見せて頂きました!


 今回のインタビューでは、家具工房にもお邪魔し、ビデオ撮影をさせて頂きました。
 ぜひ、合わせてご覧ください!
 (再生時間:約5分)




岡田敦さん、直子さん、インタビューにご対応頂きありがとうございました。
今後も淡路島に定住のご予定とのこと。木工家としてのご活躍、今後も楽しみにしています!

(インタビュー日:2010年2月10日 文責:溝淵)



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